人間と共存する環境における安全と効率を両立した移動ロボットの運用を目指すうえで,人間の移動を予測するという手法が効果的です.我々は環境内にセンサを設置した知能化環境を想定し,環境に影響を受けて移動する人間の移動傾向を観測・蓄積し,移動軌跡予測に反映させるというアプローチをとりました.
人間は移動する際,例えば直線的な廊下であれば廊下に沿って歩くというように環境の形状から影響を受けます.しかし,環境の形状だけではなく,我々は環境の持つ意味が人間の移動に与える影響に着目しました.下の図はとある屋内十字路における人間移動軌跡の観測結果ですが,環境の形状から当然予測される図左右方向の人の往来が存在しないことがわかります.図の左側エリアと右側エリアで人間が行き来しない,というこの環境が持つ意味を知らなければ,この環境において人間の移動を正確に予測することはできません.我々は,環境に影響を受けた人間の移動傾向を観測・蓄積することで環境が持つ意味を読み取り,環境の持つ意味を反映させた人間の移動予測を行う手法を提案しています.